民法総則 時効の中断、停止

伊藤真試験対策講座1 民法総則

時効期間の経過によって時効は成立するが、現在の権利者としては、ただ、手をこまねいて、時効期間が過ぎていくのを傍観していなければならないわけではない。
時効の中断や時効の停止を引き起こすことが可能である。

・時効の中断
時効の中断とは、債権者が一定の行為を起こすことで、時効期間の進行を中断させる制度である。中断というのは、たとえば、10年の消滅時効にかかる債権について、7年の時効が経過していた時点で中断した場合は、時効期間は、0に戻り、その後、再び、消滅時効の適用を受けようと思う場合は、0からカウントされるという制度である。

時効中断事由は、民法147条に列挙されている。

(時効の中断事由)
第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一  請求
二  差押え、仮差押え又は仮処分
三  承認

請求というのは、文字通り、債権者が債務者に対して、債務の弁済を請求する場合などが該当するし、差押え等についても、債権者が裁判所に訴えて、差押え等をする場合が該当する。

問題は、承認である。
承認とは、債務者が、債権者に対して、債務を負っていることを承認する場合などが該当する。
明確に、「債務を負っている」と意思表示する場合だけでなく、黙示の承認でもかまわない。たとえば、一部の弁済をするとか、支払猶予を求めるというような行為も、承認とみなされる。

この承認という行為葉、債権者の積極的な行為によってなされるものでないにもかかわらず、なぜ、時効の中断事由とされるのかという議論がある。

時効の性質について、実体法説によれば、
消滅時効は債権者が権利行使を放棄していたことによって生じるものであると説明される。そして、時効の中断は、債権者が積極的な行為を行った結果としてもたらされることになると説明できる。
しかし、承認については、債権者が積極的に弁済を求めることによって、もたらされるわけではなく、時効中断事由とされることの説明が難しくなる。(権利行使説)

一方、時効の性質について訴訟法説によれば、
消滅時効は、長年の権利関係についての証明の困難を緩和する制度であると説明されるから、その推定を覆す意味の持つ、承認という行為が時効中断事由となるのは、ごく自然なこととして説明される。(権利確定説)


・時効の停止
時効期間の停止というのは、一定の事情があった場合に、時効期間を停止させておく制度であり、時効停止事由が解消された場合は、再び、停止した時点の年数から時効期間がカウントされていくという制度である。

(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)
第百五十八条  時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2  未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

(夫婦間の権利の時効の停止)
第百五十九条  夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(相続財産に関する時効の停止)
第百六十条  相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

(天災等による時効の停止)
第百六十一条  時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。


以上、今日は、「民法総則 時効の中断、停止」についてでした。