民法総則 契約の有効要件 適法性

伊藤真試験対策講座1 民法総則

契約は自由にできるが、契約として意味を成すようにするためには、契約内容が有効でなければならない。契約内容の有効要件として、確定性、実現可能性、適法性、社会的妥当性について問題となる。

今日は、適法性についてみていく。
適法性というのは、文字通り、法律に違反していないことを意味する。
しかし、契約の内容が民法の規定どおりでなければならないという意味ではない。民法の規定のほとんどは、任意規定と呼ばれ、当事者が、契約内容について、定めていなかった場合に、民法の規定が適用されるというものである。であるから、民法の規定と異なるからといって直ちに、適法性に欠けるということではない。

任意規定以外にも、強行規定と呼ばれるものもある。強行規定とは当事者の同意によって、決めることのできないものである。
たとえば、未成年者のなした契約でも契約解除をすることができないと当事者間で決めたとしても、未成年者保護に関する条項は、強行規定であり、これに反する契約条項を定めることはできない。
適法性とは、強行規定に反していないことを意味する。

※参考
公序良俗
第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
任意規定と異なる意思表示)
第九十一条  法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。


民法以外の法律によって、規制されることもある。
代表例が行政による規制がある。行政による規制としては、無免許営業の規制、規制品の取引があげられる。

・無免許営業の規制
たとえば、不動産屋を営むためには、宅建業の免許が必要である。免許なくして、不動産屋を営業することは違法である。このような規制のことを取締規定と呼ぶ。
では、違法営業の不動産屋との取引によって生じた債務について、弁済する必要はないのかというとそうではない。
宅建業法は単なる取締規定であって、無免許で営業している不動産屋に対して債務を弁済しなくてよくなるわけではなく、売買契約自体は有効として扱うとするのが判例の傾向である。
なぜなら、取締規定違反だからといって、契約を無効にしてしまうと、市場が混乱するからである。
一方、取締規定の中でも、公益性の高いものについては、契約自体を無効となることもある。たとえば、非弁行為については、非弁護士と結んだ委任契約を無効とした判例がある。このように契約自体を無効にする取締規定のことを効力規定と呼ぶ。
無免許で営業している場合だけでなく、免許を違法に貸与して営業している場合も同様に考えることができる。

・規制品の取引
一定の禁制品、有毒物、危険物については、取引が禁止されている。このような品の取引は契約自体を無効とする効力規定であることも多いが、適法性としてではなく、社会的妥当性の問題として処理される例が多い。


最後に、脱法行為の効力が問題となる。
脱法行為とは、強行規定に抵触しないようにほかの手段によって、目的を達しようとする行為である。
たとえば、高利貸が利息制限法の適用を免れるために、利息という名目ではなく、手数料という名目で、金銭を徴収しようとするような行為を行ったとする。
このような行為がなされると、利息制限法が骨抜きになってしまう。そこで、利息制限法では、明文で、脱法行為を禁じている。

しかし、何でもかんでも脱法行為だからといって禁止するわけではない。
たとえば、物権については、当事者の同意により、創設することはできない。(物権法定主義)しかし、実際には、民法の規定にはない譲渡担保と言われる物権があり、判例も、譲渡担保の存在を認めている。

以上、今日は、「民法総則 契約の有効要件 適法性」についてでした。