民法総則 時効の中断事由 請求

伊藤真試験対策講座1 民法総則

時効期間の経過によって時効は成立するが、現在の権利者は、一定の行為をすることで、時効を中断させることができる。時効中断事由は、民法147条に列挙されている。

(時効の中断事由)
第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一  請求
二  差押え、仮差押え又は仮処分
三  承認

今日は、請求について、検討していく。
請求というのは、文字通り、債権者が債務者に対して、債務を弁済しろと請求することであるが、単に、「弁済しろ」というだけでは、催告に過ぎず請求としての意味を持たない。
民法上、請求としての意味を持たせるためには、訴訟を起こすなどの裁判所が関与する手続きが必要である。

・催告
催告をした場合には、6ヶ月以内に裁判上の請求を行わなければ、時効中断の効力は生じない。(民法153条)そのため、訴訟を提起するまでのつなぎの役割しか果たさない。

・裁判上の請求
催告だけでは、請求としての意味を成さず、裁判上の請求によってはじめて、時効が中断する。裁判で判決が出るまでは、時効が中断し続ける。
しかし、裁判の場合、請求が認容される場合と、されない場合とがある。
請求が認容された場合は、時効の中断が確定して、判決確定後に、新たな時効が進行することになる。(民法157条)

一方、請求が認容されなかった場合は、時効中断の効力があるのかどうかが問題になる。
裁判上の請求については、「訴えの却下、取下」の場合は、時効中断の効力を生じないとされている。(民法149条)
訴えの却下、取下があった場合は、請求している権利の不存在が確定したようなものであるから、もはや、時効が問題にならないからである。
しかし、学説の中には、訴えの却下、取下は、裁判上の請求としての意味は持たないものの、訴えを提起している以上、催告としての効力を認めるべきであると主張する学説もある。(裁判上の催告)

また、訴えを提起する場合に、債権の全部についてではなく、一部について、訴えを提起する場合もある。一部の請求を行った場合には、残りの部分についても、時効中断の効力があるのかどうかが問題になる。
判例は、訴訟を提起していない部分については、時効中断の効力は生じないと解釈している。
ただ、学説には、一部の請求であっても、裁判の過程で、債権の存在の有無を判断するわけだから、残りの部分についても、時効の中断の効力を生じさせてもよいのではないかという説もある。

※参考条文
民法
(裁判上の請求)
第百四十九条  裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
(中断後の時効の進行)
第百五十七条  中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
2  裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始める。

以上、今日は、「民法総則 時効の中断事由 請求」についてでした。