民法総則 契約の有効要件 実現可能性

伊藤真試験対策講座1 民法総則

契約は自由にできるが、契約として意味を成すようにするためには、契約内容が有効でなければならない。契約内容の有効要件として、確定性、実現可能性、適法性、社会的妥当性について問題となる。

今日は、実現可能性についてみていく。
実現可能性とは、簡単に言えば、契約内容が実現可能なものでなければならないということを意味する。
たとえば、

1、甲が乙に対して、火星旅行に連れて行くと約束したとしても、現在のところ到底実現しそうもない契約なので、契約は無効となる。典型的な実現可能性のない契約といえよう。

2、また、甲が有名画家の絵画を持っていたとして、その絵画が紛失しているにもかかわらず、乙との間で売買契約を締結したとしても、絵画が失われている以上、実現可能性のない契約になる。

重要なことは、契約を締結する時点で実現が不可能でなければならないということである。
たとえば、絵画が紛失して実現不可能となる例で言えば、契約時点で、絵画が紛失している場合に実現可能性がないと評価される。
契約締結後に、絵画が紛失した場合は、契約が無効になるわけではなく、紛失について売主に責任がある場合は売主の債務不履行責任になり、責任がない場合は、危険負担の問題となる。

参考条文
民法
債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

(債権者の危険負担)
第五百三十四条  特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2  不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。


では、契約内容の一部が履行不能の場合は、どうなるであろうか。
一部不能の場合は、原則として、その部分のみ無効となる。しかし、一部が不能の場合は、当事者がその契約を欲しないであろうときは、全体を無効とすることもできる。とされている。

以上、今日は、「民法総則 契約の有効要件 実現可能性」についてでした。